ダイスン

Arsenalとその他もろもろ

『たそがれたかこ』と中年の孤独

gendai.ismedia.jp

 

『たそがれたかこ』という見た目がかなり地味なマンガがあって、以前にKindleで1巻無料になっていたときに読んだ。こういう「現代ビジネス」みたいなサイトでマンガ紹介?をしているのを見たことがなかったので、へえと思いながら久しぶりにまた読んでしまった。結局1巻しか読んでいないけど、名作のにおいがするマンガである。

 

主人公の「コミュニケーション能力の低い45歳バツイチ女性」って設定だけで、そのリアルすぎるキャラクターにおれは無性に泣けてくる。ダンナにひとり娘を取られているってのがまた泣ける。

こういう恋人も友だちもいない(少ない)ような孤独な中年というのは日本全国ほんとうにゴマンといるはずで、このマンガではそういったふだん陽の当たらないマジョリティの一側面がクロースアップされている。リアルすぎてちょっとつらいくらいだ。

 

ただ生きるという苦しさ

改めてこのダイジェストを読みながら、この主人公が持つ虚無感とかうっすらとした絶望感というのは、たぶん「死なない」からなんだろうなとも思った。死なないからそれゆえに不幸であるというのはおかしな話しではある。だが、かりに喰うに困るほどの貧困ならば、悩みのベクトルはまた違った方向に行くはずだ。

 

この人は住むところもあるし仕事もあって、ひとまず喰うには困っていない。ただ人生に張り合いだけがない。これからも生きていたいと思うだけの希望がない。どこへいっても人間関係が希薄だからほんとうに誰かから必要とされていると思えない。だからこそ、代わり映えのしない日常をあと40年も続けなければならないということに絶望がある。おれには他人事感が全然なかった。

 

たかこさんのうちは、この世に存在するであろうもっと貧しい家庭からすると、うらやましい境遇といわれかねない部分もある。が、かつて江戸アケミも唄ったように、幸か不幸かはこころの持ちよう次第なのである。事実おなじ部屋に暮らす年老いた母はいかにも楽しそうである。

たかこさんの寝ているときにもふと涙を流してしまうような鬱屈した降り積もっていく倦怠感のようなものは、当人以外には理解されがたいものであるのだろう。「うつは甘え」といえるようなメンタリティではこの中年の悲しい涙は到底理解することはできない。

おれもこの年齢になって、ふと寂しさが極まるような、これまでいったい何のために生きてきたんだかわからなくなるような倦怠感のはびこりを感じるときがある。自分のなかだけじゃなく同年代の友人にも感じることがある。そういえばこんなふうなリアルな中年メンタルの危機が描かれたマンガは見たことがなかったかもしれない。

 

中年の危機+アルファというテーマ

たぶん、ふつうに生きていれば当然のように乗っかれるものだと思い込んでいた「人生のレール」にうまく乗れなかったような人間には、非常に重く響くものがあるのではないだろうか。

 

おれたち世代の中年は人口分布でいえばボリューム層であるわけで、今後うつになる人がもっと増えて世間的に顕在化してくるようなことがあれば、<中年の孤独>はエンタメ作品のテーマとしてももっと注目されそうな気がするな。

 

どうやらこの『たそがれたかこ』は、「人生大逆転ストーリー」らしいのでこのあとに救いはあるとわかっただけでおれはうれしかった。

 

すでに8巻まで出ている人気マンガを1巻しか読んでないおれが語るのもどうかと思うが、ダイジェストを読んだ勢いで思ったことをつれづれに書いてしまった。新年に。

 

 

<蛇足>

作者の「入江喜和」 でググったら新井英樹と結婚してる人なんだということを知ってびっくりした。マンガ家同士って結構結婚するもんなんだな。

 

そういえば大好きだった鳥飼茜の『おんなのいえ』最終巻(8巻)の巻末に、「たそがれたかこ」と「おんなのいえ」のコラボマンガが載っていた。なかなかいいコラボ。

 

 

たそがれたかこ(9): KC DX

たそがれたかこ(9): KC DX

 
たそがれたかこ(8) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(8) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(1) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(1) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(7) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(7) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(5) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(5) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(2) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(2) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(6) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(6) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(3) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(3) (BE・LOVEコミックス)

 
たそがれたかこ(4) (BE・LOVEコミックス)

たそがれたかこ(4) (BE・LOVEコミックス)