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ダイスン

Arsenalとその他もろもろ

本田圭佑は移籍したほうがいいぞというかフットボーラーのプライド問題

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www.footballchannel.jp

 

イタリアでも16/17シーズンが開幕していた。本田圭佑が2節になっても出番がなかったということで、ホンディに活躍してもらわないと食いっぱぐれる系の国内フットボールメディアは本田について記事を書くのに苦労しているようだ。

 

本田はイタリアの有名クラブで10番をつけている。一昔まえであれば、いやふた昔、数十年まえならもっと、あのACミランで日本人が10番をつけているということだけでタダ事ではなかった。だが、現在のACミランは国内でタイトル争いに絡むこともできなければ、ヨーロッパで活躍することももちろんない、名実ともに「凋落」しているクラブである。日本人が10番をつけたところで、その価値も暴落している。チーム自体が落ちているので、史上最低の10番といわれてもそれは一概に本田のせいとはいえない。

 

個人的には本田はまだ身体が動くうちに、出場機会のありそうなイングランドやスペイン、ドイツなどの中位から下位クラブへ移籍してもらいたかった。三十路とはいえ、ちゃんとミッドフィールドの王様として扱ってもらえれば本田の能力はまだまだ通用するはずだし、ぼくだけでなく日本のフットボールファン全員がそう思っているように思う。ヨーロッパで活躍しているホンディが見たいのだ。

 

そんなとき、イタリアで活躍したのちにイングランドに移籍するも大したインパクトを残せず20代で引退してしまった中田氏を思い出す。かつてのジョカトーレ、いまは日本酒アンバサダーの。

多くの識者が語っていたように、彼は自らのプライドを捨て去ることができなかったんだろうか。フットボール市場で自分の価値が下がりきるのを恐れるかのように、早々に引退してしまった。ヨーロッパでもこういった引退の仕方をする選手はまれなんじゃないか。少なくとも自分はほとんど記憶にない。

 

フットボーラーのキャリアといえば、仮に全盛期をビッグクラブで過ごしたとしても、選手としての晩年にはもっと下位のリーグやチームに移籍したり、自分が若いころに育ったクラブに帰ったりするなど、活躍の場を移すことであくまで現役でのプレイにこだわり続けるという印象がある。そういったプロのフットボーラーなら誰でもが持っているプレイへの執着や情熱といったものを中田氏はあっさり手放してしまった。彼なりの「スタイル」というか「自分像」が、現役にこだわってまで<都落ち>するということを許さなかったのかもしれない。当時ヨーロッパでもそれなりの選手として知られていた中田氏の引退にはその世界にいる誰も驚いたはずだ。

 

本田と中田氏は似たところがあるようだ。以前にテレビでふたりの対談を観たけれど、現代にヨーロッパで成功した(日本人の)フットボーラーだけがわかり合える何かがあったのかもしれない。トッププレイヤーとして意気投合しているような雰囲気がかなりあったように思う。恐らく同じヨーロッパで孤軍奮闘した日本人として「プライド」についての価値観もある程度共有していたんじゃないだろうか。

本田は中田氏と同じくらいプライドが高そうだ。ワールドカップは優勝を目指すなどの言動も有名だし、そもそも自分の能力に疑いを持っていないし、そう思っていることを隠そうともしない。もちろん彼は虚勢を張っているのではなく、そういうことにあえて言及することで自分を追い込み、鼓舞しているんだろう。そういったアグレッシブな姿勢については尊敬できるところがあるし、中田氏も現役時代にはそういった気性の持ち主だったように思う。揺るぎない確固とした意見を持ち、自らの意志を貫くためにはあえて大言壮語も辞さない、そういったタイプの人間。

 

近年ではオーストリアのチームの経営者になったり、メディアでたびたび教育の問題に言及するなど、あきらかに引退後を見据えたであろうビジネスの世界に情熱を傾け始めている。

本人は絶対に認めないだろうが、ぼくにはそれが本田が年齢を重ねるにつれプレイ精度が落ちてきたタイミングと無関係とは思えない。実業にかまけるせいでプレイがおろそかになったとは思わないが、プレイする情熱が落ちれば試合中の集中力や注意力に影響するのは必然だろう。ミランでのプレイ映像を観れば、シュートやパス、トラップ、ポジショニングなど全盛期にくらべあらゆるプレイの精度が物足りない。

しかしそれでいいんだろうか。彼がいずれ全精力を傾けるであろうスポーツビジネスに説得力があるとしたら、それは彼の類まれな才能というよりは、努力や情熱といったものが人びとに共感を与えたからではないだろうか。フットボールに集中していない本田圭佑に何の魅力があるだろうか。

 

ビジネスマンタイプであっても現役にこだわることはできるはずだ。

マシュー・フラミニを見てほしい。彼はひっそりとバイオケミカル系企業を起業し成功させた生粋のビジネスマン・フットボーラーだ。Arsenalを二度退団した32才の彼はいまだに現役のプレイを希望し、ビジネスでもっと成功してArsenalを買ってくれとファンから声援を送られるなか、次のチームを模索中であるという。去年までのArsenalでのプレイを見れば、ヨーロッパのトップでは無理でも、中位や下位チームあるいは中国やインドといった新興国のリーグではまだまだ活躍できるはず。

BBCのインタビューに応えるフラミニ社長の勇姿。


Football star's biotechnology venture BBC News

 

中田氏が20代という若さで早々にプロフットボールの世界から身を引いてしまったのは、日本人のファンからすればやはりもったいなかったし、世界中のフットボールファンからすれば理解不能だったろう。今思えばその決断はちょっと尊敬できないと思う。旅人から日本酒アンバサダー、存在意義がよくわからないタレントとなった本人はいまどう思っているのだろう。

本田には、いくらビジネスに傾倒しようが、そういう中田氏のような理想主義的でナルシスティックな価値観からは一歩おいてほしいと願う。そして、名門ミランからもっと小さいクラブに闘う場所を変えたとしても、あくまで泥臭く現役を続けてほしい。なにより、ファンとしてまだまだプレイする姿を観ていたいのだ。